URINARY INCONTINENCE
尿失禁
尿失禁とは
尿失禁とは、日常生活の中で自分の意志とは関係なく尿が漏れる現象を指します。尿失禁にはいくつかのタイプがあります。急な腹圧の変化によって尿が漏れる場合は、「腹圧性尿失禁」と呼ばれます。例えば、咳やくしゃみなどでお腹に急激な力がかかると尿が漏れることがあります。また、尿意切迫感に伴って、自分の意志とは関係なく尿が漏れる場合は、「切迫性尿失禁」と呼ばれます。このタイプの尿失禁では、トイレに行く前に尿意を感じると尿が漏れることがあります。さらに、腹圧性と切迫性の両方が同時に起こる場合は、「混合性尿失禁」と呼ばれます。
尿失禁は、女性によく見られる症状であり、成人女性の約25%(4人に1人)、40歳以上では約40%の方が経験するとされています。女性の場合、尿道が短く、膀胱を支える骨盤の筋肉が妊娠や出産などのライフイベントで緩むことから、尿漏れが起きやすい傾向があります。
尿失禁の症状
例えば、くしゃみや咳をした瞬間に尿が漏れる、お腹に力が入ったときに尿が漏れる、運動やジャンプをすると尿が漏れるなどが挙げられます。また、妊娠してからくしゃみなどで尿漏れを経験した方や、強い尿意を感じて我慢できずに尿が漏れる方もいます。
尿失禁の原因
尿失禁には、主に「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の2つのタイプがあり、これらが全体の90%を占めます。具体的な特徴や原因は以下の通りです。
腹圧性尿失禁
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腹圧(お腹に力が加わる状況)がかかると尿が漏れるタイプです。
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女性の尿もれで最も一般的なタイプで、週に1回以上経験する女性は日本全体で500万人以上いると言われています。
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くしゃみや咳、重いものを持ち上げる際に意図せず尿が漏れる症状です。
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加齢や出産によって、膀胱や周囲の筋肉が弱くなることが原因です。
切迫性尿失禁
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突然尿意に襲われ、トイレに間に合わずに尿が漏れる症状を指します。
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外出時などで急に尿意を感じてしまうため、外出することが不安になることもあります。
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膀胱が過敏になり、尿意切迫感を感じる過活動膀胱の症状の一つでもあります。
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50歳以上に多くみられ、加齢に伴い増えていきます。
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原因は、脳や膀胱の神経経路の障害や、膀胱の過敏性、前立腺肥大症、膀胱瘤、骨盤臓器脱などが考えられます。
このように、尿失禁は年齢や生活状況によって異なるタイプがあり、それぞれに適した治療や対処法があります。
尿失禁の治療
薬物療法
尿もれのタイプに応じて異なる薬が使用されます。飲水量のコントロールや行動療法と併用されることもあります。
生活指導
飲料の過剰摂取や利尿作用のある飲み物(カフェインやアルコールを含むものなど)の調整、禁煙、肥満の改善など、生活面での改善点を一緒に考えます。便秘などがある場合は、その為の投薬治療も行われることがあります。
膀胱訓練
膀胱訓練は、漏れてしまう前に我慢する訓練です。徐々に我慢できる時間を延ばし、膀胱に溜められる尿の量を増やすことを目指します。
骨盤底筋体操
骨盤底筋体操は、お腹に力を入れないようにして尿道やお尻周辺の筋肉を引き締める体操です。腹圧性尿失禁の改善に効果があります。
手術療法
保存的療法や薬物療法で症状が改善しない場合、または不十分な場合には手術が選択されます。手術の一例として、TVT手術やTOT手術があります。これらの手術では、尿道の下にポリプロピレンメッシュのテープを通して尿道を支える方法が採用されます。手術後は約2カ月間、運動を控える必要がありますが、手術によって尿もれが改善されることが期待されます。